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ディーアとナディア、ドーナツと語る

 正午の鐘が部屋の中にまで響く。ナディアはふと窓を見ると大粒の雨が降っていた。
「やっぱり今日は家にいてよかった~」
 すると、インターホンの音が聞こえてきた。手すりを持ちながら階段を下りて、画面越しに枝のような角がある来客と話す。
「よう、ナディア! 雨宿りさせてくれねえか?」
 ナディアはため息をついて気だるげに話す。
「もう~。ディーア、天気予報見なかったの~?」
「見たぜ? でも折り畳み傘でいいかと思ってたらこのざまだ!」
 ディーアは、壊れてしまった折り畳み傘を見せながら笑っている。
「もちろん、詫びに色んなドーナツ買ってきたぜ! ランチにどうだ?」
 ナディアは、ドーナツという単語に鹿の耳をピクリとさせる。
(カップ麺作るの面倒くさいからディーアのドーナツ貰おうっと)
 ナディアは少し悪戯っぽい笑みを見せた後、軽い口調で返事をする。
「しょうがないな~、ナディの部屋には上がらないでよ?」
 ナディアは、玄関に赴き、靴も履かずに扉を開けた。雨がしとしとと降っている。
「邪魔するぜ」
 ディーアは靴を脱いだ後、履いていた靴をある程度揃えたうえでダイニングに入っていく。椅子にあぐらをかいて座ると、リング状の絵柄が書かれた箱をテーブルに置いた。その間にナディアは白い皿を用意している。
「2個ずつな。でも先に選んでいいぜ? どれがいい?」
 悪だくみをするように笑うディーアをよそにナディアは、クリームを入れる穴がある丸い形のドーナツと、コーディングされたイチゴクリームの上にチョコスプレーがかかった穴の開いたドーナツを皿に丁寧に乗せる。
「やっぱりそう来たな」
 ディーアは目を少し細めながら歯を見せた。そのあとには箱の中に残っている、さっくりと揚がった焦げ茶のリング状のものと、表面に網目がある狐色のものを手に取り、皿に移した。
「ディーアも変わらないね~。それともまたアレンジ?」
「いや、今日はシンプルな奥行きを味わおうと思ってね」
 ディーアは網目を持つドーナツを片手で持ち、かぶりつく。ナディアも中に入ったクリームをこぼさないように両手で持ちながら、小さい一口で食べる。
「それにしても、なんでまた雨の中ドーナツを買おうと思ったの?」
 あっさりとした生クリームを味わいつつ、ナディアはディーアに対して軽い質問を与える。
「あんたと食べたくなったからだぜ」
 その言葉に、ナディアは冗談っぽく笑う。
「1週間前にはメラファくんと唐揚げ食べてたよね~」
「ま、大学のレポートを見るついでに買ったものだがな」
「レポートは上手くいったの~?」
「勢いで何とかなったらしいぜ」
 ディーアとナディアは話を軽快に交えながら、1つ目のドーナツを同時に食べ終えた。
「やっぱり、大きい傘を忘れたのはわざと?」
「さぁな?」
 ディーアは2個めのドーナツをさくりと音を立てながら食べ始め、ナディアもスプレーを落とさないようにドーナツを舌に乗せた。
 イチゴの味が口いっぱいに広がるころには、雨もぽつりぽつりと音を変えていた。

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